趣をかたちに
建物における”趣”というもの。
それは人々が社会や家庭という共同生活の中で、安らぎや癒しを皆で共有しながら生きて行くためになくてはならないものでしょう。
その情緒的機能の果たす役割には、とても大きな意味があります。
趣のある「かたち」は、人々を豊かな感性と、感動・実感のある生活へと誘う「もと」ではないでしょうか。
現代の都市の、自然との触れ合いの限られた社会の中でこそ、自然と深く関わりをもった「かたち」の中で、親しみと潤いを感じながら過ごしたいものです。
通りに面した集合住宅の、曲線を多用した柔らかい外観の表情は、街並みに優しく溶け込む。
3階建集合住宅の中庭。門をくぐると、スペインのパティオを連想させる空間が広がる。
円形の木組に包まれた光溢れるリビング。
木組あらわしの天井、無垢のフローリング、漆喰壁とが癒しと安らぎの空間を作り出している。
和と洋
建築には、ギリシャ・ローマ風または日本の書院造りというような「格式の美」があるとすれば、ヨーロッパ田舎風あるいは日本の茅葺き・土壁の田舎民家の「素朴な美」とでもいうような美しさがあります。今の時代、洋服が定着し、純粋な和服を着ている人は少ないように、建築にもその時代精神を敏感に反映した日本の本当の「洋服感覚の和室」つまり、自然との連続性を色濃く残しながら、素朴で洋風な時代に合った和室があっても良いのではないでしょうか。
地階とは思えない洋風和室と中庭。和室の壁は外壁と同じ生石灰土壁。
中庭から和室へ。外壁の左官仕上げが和室内部まで入り込む。
ガラス庇のアプローチを兼ねた中庭。外壁は生石灰土壁。自然と一体となった素朴な美しさ。