建物概要
所在地 | 東京都杉並区高円寺 |
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用途 | 専用住宅 |
竣工 | 2007年6月 |
規模 | 木造2階 地下階RC造 |
延床面積 | 188.47㎡ |
掲載誌 | ‘07年 「日経アーキテクチュア 7-9号」 ‘07年 「ニューハウス 9月号」 |
まちに集まって住むことの意味は? 家族とは? 生活を楽しむとは?
今「自然」の概念は思っている以上に大切と思われる。(別記「素材の本質の中に」参照)
外に自然を求めるのではなく、住まいの中に、生活の中に、自然との一体感を享受できる空間が、今こそ必要なのではないだろうか。
30坪にも満たない敷地に建つ専用住宅の小さな中庭である。「KISSAKO」の中庭はすべての部屋に面するように設計した。それは各部屋の通風、採光等を計るだけでなく、この住宅のアプローチでもあり、地階の西洋田舎風和室の茶庭にもなっている。「茶の湯」の精神の中に、またロマネスクの乾いた石塗込の空間に、脈々と流れる共通した美しさを感ずるのは私だけであろうか?また中庭を囲むようにプラントボックスが配され、四季の草花が植えられる。それだけでなく、空、風、雨、水、そして建物の仕上でもある、石、土、木等の自然の素材を共用する中庭である。「素材」―その力は思っている以上に大きい。(是非、実際に目で見て頂きたい!)
建物の保護目的としての仕上だけでなく、又近代の驕った美意識を象徴する目的でもない、自然の素材の奏でる音色(ねいろ)、ハーモニーを通してはじめて、家族、共同体の象徴としての中庭の意味が問い直されるのではないだろうか。建築がそこにどこまで積極的に寄与できるか、そんな思いで設計した。
なお土壁の土は(CASA DE ATRIO)と同じ栃木の葛生から取り寄せた。以前の土とは少し勝手も違い、現場での調整も若干あったが、木々の緑に、草花にやさしく包まれた何とも言えぬ趣きに仕上った壁を前にし、現場での責任施工の苦労が懐かしく思い出される。